エーデルワイスプログラム
イントロダクション The Introduction
かつて地上を覆いつくした白い花から生まれた万能の白いオイル。それを見つけた人間たち。オスはプロペラを回して空を飛び、メスは服や化粧品を作ってその身を飾った。しかしこの白いオイルの生成物「プラスチカ」の人体への影響で、子供が作れなくなる。「プラスチカ」をあきらめた人間たちは、ガラスの子宮で生成物を作る「オルガチカ」の技術を開発する。すべてがうまくいきかけたとき、メスたちが叫んだ。「オルガチカは醜い。私たちが欲しいのはやっぱりプラスチカ」。未来を捨てて、その身を飾り始めたメス。あきれたオスは母性のシンボルである月へ逃げていく。かくして地上には「髪結い、男娼、按摩」などのオスだけが残り、欲望が開放されたメスたちは、自分たちの理想の都「末京」を建設し始めた。
リンゴのエンジン THE APPLE ENGINE
月へ移住したオスたちは、月を唯一の女性とする厳格な禁欲生活を送っていた。そこに住む「ボク」は、おじいさんから地球に住むメスたちの話を聞き、好奇心がわく。特別に栽培した「地球に引っ張られるリンゴ」をロケットの先にとりつけて地球に向かうが、地上で出会うメスたちの退廃ぶりに絶望する。そしてプラスチカの影響を受け、自分の体がメス化し始めていることに気づく。虚無感の中、リンゴで首を吊ろうとするが、胎児のイコンを抱いて歌うメスたちの集会を目撃する。自殺を思いとどめた「ボク」は身ごもることを決意する。
プードルズの反乱 THE REBELLION OF POODLES
メスたちの暴走にほとんどのオスたちは月へ逃げたが、一部のオスは地上に残った。かつて白いオイルを発掘するために作られた土を喰う巨大な装置「土喰(DOG)」に乗って、地下世界へと逃げ込む。そしてオスたちが、その強さの象徴としていた「バイク」と「ナイフ」を改造し、脆弱になったアゴのかわりにメスを噛み砕く装置「プードルズ・ヘッド」を完成させる。この地下組織のリーダーの「ボク」は「土喰(DOG)」に乗り込み、末京への大規模な反乱を計画し、月のない夜、メスの都「末京」へ総攻撃をかける。
泣く羊 THE CRYING SHEEP
胸に空いた「退廃の穴」のために涙を流し、失明していくメス。「オルガチカ」の技術者「ボク」が、感情の制御プログラム「BAKUバク」を使って、その「退廃の穴」を封鎖する章。
ハミングする櫛 THE HUMMING COMB
「末京」でメスの代わりに人工子宮で胎児を育てていた「ボク」は、ある日、古代遺跡から発見された櫛にインスピレーションを受け、メスのために美しい歌を歌う櫛を作ることを思いつく。男娼と偽って“きれいな髪のメス”から卵子を奪い、開発した発生プログラムと交配させ、歌う櫛を作る。その櫛で髪をといた美しい髪のメスは、死ぬまで髪をとき続ける。発生プログラムを手に入れたほかのメスたちも次々に歌う櫛を出産する。やがて地上からすべての人間が姿を消したとき、櫛たちは満月の夜、一斉に白い花を咲かせて地上を覆った。